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エンターテインメント部門

優秀賞

のらもじ発見プロジェクト

ウェブ、オープンソースプロジェクト

下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也(日本)

作品概要

町のあちこちにひっそりと佇む看板の手書き文字には、データとしてきれいに整えられたフォントにはない魅力がある。不思議な愛らしさや人間味をたたえた「のらもじ」。このプロジェクトは風雨にさらされ経年変化し素材と馴染んだその様子に、デザイン的な魅力や古道具的、民藝的な魅力を積極的に見出し、愛でることから始まった。本プロジェクトでは発見した「のらもじ」を鑑賞し、形状を分析してコンピュータで使用可能なフォントを制作する。そのフォントはウェブ上で配布され、ユーザーはダウンロードのうえ「のらもじ」を使うことでその魅力を知ることができる。更に「のらもじ」を後世に残すサポートとして、フォントデータの代金を持ち主に還元している。本プロジェクトは、地方都市の景観の伝承であり、タイポグラフィにおける「民藝運動」とも言える。

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贈賞理由

高齢化、過疎化が進んだ地方都市で、地元商店街の風情を継承し、地域活性化を推進する取り組みはこれまでたくさん見られてきた。しかし、この試みはさすがに前代未聞だ。都市景観に昭和レトロな佇まいを色濃く残す、商店看板の手書き文字を保護し、それら一点もののタイポグラフィを形状分析の上、フォント化して、デジタルネットワーク上で配布するのだ。しかもデータの売り上げは持ち主に還元されるという。「のらいぬ」でも「のらねこ」でもなく、名もなき職人達が肉筆で描き、地元コミュニティに解き放ったこれら「のらもじ」は、セピア色のストリートに今もひっそりと佇むアルカイックなタギングである。そして保護された「のらもじ」たちは、フォントデータとして未来永劫生き抜くはずだ。そしてこのプロジェクトは今後、列島全域に発展させる計画らしい。これは、国土地理院もGoogleマップも発想できなかった「民藝運動」なのだ。(宇川 直宏)

下浜 臨太郎 SHIMOHAMA Rintaro

アートディレクター。広告、デザイン、アートを行き来しながら制作を行っている。

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西村 斉輝 NISHIMURA Naoki

1984年、兵庫県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業、デザインスタジオTHAにてデザイナーとして勤務。

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若岡 伸也 WAKAOKA Shinya

1982年、石川県生まれ。金沢美術工芸大学視覚デザイン先攻卒業。広告代理店などを経て、現在山梨でフリーのグラフィックデザイナー。古道具や器を愛でる目線で、地域の看板を探し鑑賞している。

handiii

ガジェット

近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉(日本)

作品概要

『handiii』は3Dプリンターで出力したパーツとスマートフォンを制御に利用した「気軽な選択肢」をコンセプトとした筋電義手だ。筋電義手とは、腕の皮膚上で計測される筋肉の微弱な電気信号(=筋電)を介して、直感的に操作できる義手のことである。技術そのものは戦前からあったが、市販価格は非常に高価であり、普及率は極めて低かった。本作では3Dプリンターとスマートフォンを活用することで、材料費を3万円以内に抑えている。またデザイン面においても、既存の義手が人肌に似せているのに対し、本作は腕時計やスニーカーのように使う人が気分や場面に応じて色やパーツを変更できるようになっている。更に外観だけでなく、指先にICチップやマイクを組み込むなど機能面での拡張性を加えることで、あらゆる人々が羨ましいと思う義手を目指す。現在は実用化に向け、ユーザーとともに開発を進めている。

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贈賞理由

『handiii』 は筋電義手(筋肉の電気信号で操作する義手)であり、義手を巡るプロジェクトだ。高機能・高性能を目指すことで、へヴィかつ高価になりがちだった筋電義手の実用化を図る。パーツを3Dプリンターで作り、電気信号の読み取りはスマートフォンで行う。機能を必要最小限に制限し構造をシンプルにした。これらが生み出すのは製造コストの削減だけではない。個人で修理交換が可能になる。取り回しが用意になる。カスタマイズ可能性が向上する。ファッションとして機能させることができる。義手そのものを強く高度化するのではなく、「弱さ」を強みとし、他者と関わることで活きてくるオープンなモノへと目指す方向へ転換した。失われたモノの復元にとどまらず、新しい機能としての義手になり得るだろう(プロジェクトの映像を見ていると「第三の腕」という方向性も想像してしまう)。補助装置を超えたガジェットとしての可能性を指し示した。ワクワクする。(米光 一成)

近藤 玄大 KONDO Genta

1986年、大阪府生まれ、神奈川県育ち。exiii株式会社CEO。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。ソニー株式会社にてロボティクス技術の研究及び新規事業創出に従事した後、2014年10月に学生時代の研究テーマであった筋電義手の実用化を目指して起業。

山浦 博志 YAMAURA Hiroshi

1984年、千葉県生まれ。exiii株式会社CTO。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。パナソニック株式会社にてデジタルスチルカメラの機械設計に従事。2014年10月より現職。

小西 哲哉 KONISHI Tetsuya

1985年、宮城県生まれ。千葉県育ち。exiii株式会社CCO。千葉工業大学大学院工学部デザイン科学科修士課程修了。パナソニック株式会社で光学機器・先行開発のインダストリアルデザイナーを経て、2014年10月より現職。

Kintsugi

映像作品

APOTROPIA(Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA)
(イタリア)

作品概要

本作は作家の自伝的な物語に基づいて制作された映像作品である。作者のミニョーネとパネプッチャは、2003年に人生を大きく変えるほどの交通事故に遭った。作中で、ミニョーネは長年使用してきた松葉杖を用いて情動的なダンスを繰り広げる。タイトルの由来となった「金継ぎ」とは、壊れた陶器の継ぎ目を金で覆い修繕する日本の技法だ。破損した物を修復し、その継ぎ目に新たな趣を見出すこの技法は、物質の尊さや美しさはそこに積み重ねられた時間に宿るという価値観に根差したものと言える。作中で金継ぎは、肉体的・精神的な回復のプロセスの詩的なメタファーとして引用されている。彼女の涙が「金色の樹脂」になって自らの傷を癒し、トラウマを受け入れて変わることで、新しい可能性が開かれていく―。金継ぎの技法と、作家自身のリアルな個人史とを重ね合わせ、ひとりの女性が再生へと向かうさまが描かれる。

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贈賞理由

ダンサーと、ヴィジュアル/音楽作家のデュオによるコラボレーションワーク。そのひとり、ダンサーのミニョーネは、交通事故によってダンサーの命とも言える身体に深刻なダメージを受けた。この作品に象徴的なモチーフのひとつとして登場する「金継ぎ」は、日本の伝統的な修復技法であり、破損以前とはまた異なる趣とその履歴に、美を見出し愛でるものだ。彼女の葛藤と闘いを「金継ぎ」になぞらえ、映像は展開していく。物理的な欠損そして絶望から再生へ―。異なるフェーズへと向かう再生への希望は、見る側の私たち個々の事情にも重ね合わされ、希望を与えてくれる。私小説には終わらない強さ、異質なモチーフを多彩な映像技法で提示していく方法、そしてそのクオリティは、技術と表現、身体と精神の融合を見せ、多くの作品の中でも峻立した異彩を放っていた。パーソナルな切実さの投影が、表層の表現以上に作品にリアリティを与え、普遍性に昇華されていると思う。(東泉 一郎)

APOTROPIA(Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA)
アポトロピア(アントネッラ・ミニョーネ/クリスティアーノ・パネプッチャ)

ローマを拠点に活動する、ダンサー/ヴィジュアルアーティストのアントネッラ・ミニョーネ(1980年生まれ)とアーティスト/作曲家のクリスティアーノ・パネプッチャ(79年生まれ)によるデュオ。身体表現と視聴覚的表現の融合を試みる。

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3RD

インタラクティブインスタレーション

Hedwig HEINSMAN / Niki SMIT / Simon van der LINDEN(オランダ)

作品概要

インタラクティブインスタレーション作品『3RD』は、公共空間におけるソーシャルメディアの活用と、それに伴う知覚の変化に着想を得た作品だ。参加者たちは、鳥を模した“ヘルメット”を身に着けて、空間の中を歩き回る。ヘルメットの中のモニターには、外部のカメラを通じて俯瞰された自らの姿が映し出される。目の前にデジタルな分身が現れ、まるでゲームのように感じられる現実世界に、超・現実主義的な感覚が芽生えていく。ヘルメットを着用した参加者たちは、俯瞰的に捉えられたモニターの映像から、空間を把握しようとする。客観的な視点と、主観的な感覚のズレを感じながらも、他者や周囲の環境を知覚していく。本作は現実に対する新しい視点を投げかける、新しい形のソーシャルインタラクションと言える。

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贈賞理由

体験者が手製の被りものを身に着けて、俯瞰的な視点から捉えた周囲の状況を頼りに、フィールドを徘徊する作品だ。そのくちばしに似た形は、触覚の鋭利化と動物の攻撃性、そして逃避距離を想起させる。主観的な視覚は遮断され、客観的な視点に置き換わるとともに、今ここにいる自分の体感との間にもどかしいギャップが生じる。本作は、ヘッドマウント・ディスプレイを使用した多くのバーチャル・リアリティ作品とは一線を画している。ここでの興味は、そこにある空間を、その中にいる生身の自分や他者が、情報を経由して捉えたときどのように感じるか? 主観と客観、視点のシフト、理解と体感の遊離、といった事柄についてだ。作者のこれまでの作品を見ても、空間の認識と体感、そのズレと一致などへの興味を一貫して抱いているようだ。ここに、はっきりとした仮説の提示はない。けれども、空間と知覚・認知への何らかの気付きの体験をもたらすだろう。(東泉 一郎)

Hedwig HEINSMAN ヘドウィッヒ・ヘインスマン

1980年生まれ。DUS architectsの共同設立者。デルフト工科大学を優秀な成績で卒業しヘルシンキ大学でも学んだ。DUS architectsは受賞歴を持つ建築設計事務所で、インスタレーション、プロダクトデザインやイベント、建築、プランニングを始め、長期的な都市計画も手がける。

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Niki SMIT ニキ・スミット

1981年生まれ。アーティスト集団 Monobanda PLAYの共同設立者。Monobanda PLAYは、遊びとインタラクションの境界を探り、拡張していくことを目指している。共同制作と個人制作の両方に取り組み、新しい「遊び」の形と有用性のあるインタラクションの開発を追求する。

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Simon van der LINDEN シーモン・ファン・デル・リンデン

1982年生まれ。アーティスト集団 Monobanda PLAYの共同設立者。

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