21回 アニメーション部門 講評

アニメーションならではの作品を

作品の出来はシナリオ、編集、背景、音楽、音響、作画、撮影、声など、さまざまな要素の組み合わせで決まる。それぞれの要素を一辺にした多角形の面積が大きいものが傑作となると思っている。どれかひとつだけ突出しても、多角形の面積はさほど大きくならない。あまり動かないアニメーション作品でもシナリオやその他の要素でそれなりに良い作品に、傑作と呼べる作品になることもある。が、しかしアニメーションとして、アニメーションならではの傑作になるには、動きが重要だと思っている。今回賞をとった作品はどれも、どこか素晴らしい動きの要素があった。そこがとても嬉しいことだった。大賞の2作品も、どちらも受賞するに相応しい作品と思う。『この世界の片隅に』は原作のテイストを非常によくアニメーション化していて、緻密な取材が映像に深みを与え、人物の動きも丁寧に表現されていた。『夜明け告げるルーのうた』は監督ならではの新しい試みと実験があり、動きそのものもデジタルの補助をうまく利用した優れたものになっていた。『ハルモニアfeat.Makoto』はまさに私が観たいアニメーションはこれだ、と思える作品だった。『NegativeSpace』は隙の無い構成で立体アニメーションならではの傑作だった。そして3DCGを中心としたデジタルアニメーションはスキルの進歩によりすぐに陳腐化してしまいがちなのだが、手作業の、筆や絵の具のようにデジタルを使用して制作した『COCOLORS』の映像は10年後も残る作品になっていた。バランスがよかった年と感じた。長編に優れた作品が有り、短編もそれぞれの分野で優れた作品が有り、テレビアニメーションやプロダクションのオリジナルの中編に観るべきものが有り、賞を逃した作品にもおもしろい作品が多数あった。今回は多少慣れてきて、もう少しわがままであってもよかったかと反省もしたが、余裕をもって、楽しく審査できた年であった。

プロフィール
木船 徳光
アニメーション作家/IKIF+代表/東京造形大学教授
1959年、神奈川県生まれ。東京造形大学造形学部美術学科卒業(絵画専攻)。2001年、東京造形大学着任。1979年木船園子とIKIFというユニットを組みアニメーションの制作を始め、実験アニメーションや映像インスタレーションなどの制作発表を続ける。80年代終盤より、CGアニメーション制作に携わるようになり、97年にIKIF+を設立。以後『メトロポリス』『イノセンス』『スチームボーイ』『スカイ・クロラ』等、さまざまなアニメーション作品の3DCG制作に参加。NHK教育プチプチ・アニメ『ぶーばーがー』(1995─97)、『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(3D監督、2000)、『立喰師列伝』(3D監督、2006)、『映画ドラえもん』(OPアニメーション制作・3DCG監督・スーパーバイザー、2007─09)。日本アニメーション協会監事、インターカレッジアニメーションフェスティバル(ICAF)実行委員。日本アニメーション学会、日本映像学会、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)会員。