13回 アート部門 講評

今年のアート部門の出品総数は前年比約15パーセント増。傾向としては、海外からの応募が昨年よりやや増し、中国からの応募が特に増えて昨年の3点から68点になるなど、国ごとの勢いが数字からもうかがえる。興味深いのはそれまで1点の応募もなかったキューバ、クロアチア、ウクライナ、エクアドル、スリランカ、パキスタンなどからの応募があることだ。このような傾向は、作品が生まれる社会的、文化的背景をどこまで理解して審査できるかという難しい問題を浮き彫りにする。そして毎年議論になっていることとして、インスタレーションやインタラクティブ作品も、映像というメディアを使って審査を受けなければならないという、時間的、空間的、経済的な審査自体の限界である。インスタレーションはその場の空間も含めて作品であるから、本来は体験してみないとわからない。メディアアートをどのように審査すればいいかという難しい議論もしながら、今年の審査が行われたことをここに記しておきたい。審査については、多様性、時代性、クオリティ、新しさ、プロセスなどを討議しながら、賞の決定まで進んだ。決定した賞を、ジャンル別に見るとおわかりいただけるように、今年は特に静止画でほかのジャンルに比べて特別に秀でているものに出会えなかった。それに対してインタラクティブ、インスタレーション、映像のジャンルでは受賞作以外にも素晴らしい作品が多かったのが印象的だった。

プロフィール
佐藤 卓
グラフィックデザイナー。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの商品デザインを手がけるほか、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」等のVIデザイン、NHK教育テレビ『にほんごであそぼ』の企画・アートディレクション、東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTではディレクターを務めるなど、活動は多岐にわたる。