13回 アート部門 講評

審査では身体性や社会的な仕組みもメディアとしてとらえる表現や、今後のメディア芸術がプロダクトとどのように折り合いをつけていけば良いのかといった作品が目に留まった。Web作品群では、コンテンツを共有するだけのプラットホームとした利用法だけではなく、クリエイティビティを共有するための新しい環境を提供しようとするものもあり、面白いアプローチがあった。これらの作品は物質性や物語性で完成された作品と異なるアプローチであり、異なる表現性の提示ながら評価はされにくい。このような新しい試みは魅力のあるものだったが、アート部門の審査ではメディア表現の新規性を肯定しても、芸術作品としての物質性や物語性での技術と完成度があれば、この点を評価するのは自然なことであろう。その一方で表現する可能性の芽を摘まないように、今後はこれらの新しいメディア表現の方向性について評価できるカテゴリーが必要なのではないだろうか。

プロフィール
関口 敦仁
情報科学芸術大学院大学(IAMAS)学長
1958年、東京生まれ。東京藝術大学美術学部卒業、同大学院修了。80年より美術作家として絵画やメディアインスタレーションを主に発表。96年より岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー教授、2001年より情報科学芸術大学院大学教授を務め、現在、同大学(IAMAS)学長。メディア芸術や情報デザインでの活動のほか、美術情報学、芸術史、伝統芸術、考古学のアーカイブ表示研究などを行っている。主な作品に『地球の作り方』『景観シリーズ』、著書に『デジタル洛中洛外図屏風[島根県美本]』(共著、淡交社)などがある。