13回 エンターテインメント部門 講評

一次審査と最終審査の間に『THIS IS IT』を見ました。マイケルの遺作となったこの映画に、マイケルが彼のバンドの「表現したい音」ではなく「観客の期待する音」に近づけるためにリハの途中で執拗にアレンジを修正するシーンがあります。僕はそこに、King of Entertainmentの矜持を感じ取りました。つまり、エンターテインメントとは、表現者の表現を押しつけるだけではなく、まずはユーザーの「期待」に応え、その上で気持ちよく裏切らなくてはいけない、と。そこがアートとエンターテインメントの大きな違いではないか。僕は上質なエンターテインメントとは、常に表現者とユーザーの中間に成立するものだと思います。その点でいうと、やはりゲームは強い。人を魅了するという力では、ゲームに比べると映像での表現は一段格落ちします。さらに広告はもう一段格落ちします。どうしても送り手の主張が先に立ってしまうからです。残念ですが。

プロフィール
内山 光司
クリエイティブディレクター
1961年、埼玉生まれ。広告、エンターテインメント、テクノロジーの3つが交わるところを活動の場とし、クリエイティブエージェンシーや制作プロダクションの枠にとどまらず、デジタルコミュニケーションとエンターテインメントのアイデアを融合した先進的なマーケティングソリューションの提供を行っている。カンヌ国際広告祭での金賞を3度獲得しているほか、世界中のさまざまな広告賞、デザイン賞を受賞。メディア芸術祭では優秀作品賞2回、審査委員会推薦作品4回獲得。