13回 アニメーション部門 講評

今年の長編やTVシリーズを中心とする商業ベースの作品は、原作ものではなくオリジナルの企画が多く印象に残った。 既存のコミックや小説の商業的成功に依存せずにゼロから物語、企画を立ち上げ、商品として観客に提供するために必要な体力、胆力のボリュームは同じつくり手として素直に敬意を表さざるを得ない。とりわけ、現代へのテーゼを含む次代に向けたTVシリーズとして始まり、来年公開の2本の映画で完結する 『東のエデン』の圧倒的な物量でありながら見事に制御された情報の可能性に期待したい。 その一方で今回入賞した作品を凌駕する可能性のある作品が応募されていない残念な現実も忘れてはならない。自薦が原則なので仕方ないが、今まで完結していない物語に対して評価を保留してきた結果なのだろうか。 企画そのものが大型化する風潮の中、1年ごとのタームのどの段階でどう判断するのか、評価する側も試される時がきたのかもしれないのだ。

プロフィール
樋口 真嗣
1965年、東京都生まれ。映画監督・特技監督。平成ガメラシリーズでは特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作品に『ローレライ』(2005)、『日本沈没』(2006)、『のぼうの城』(2012)など。