12回 エンターテインメント部門 講評

この部門では、異なるメディアをプラットホームとする作品をひと括りに審査してきた。始めはどうやって審査をしていくのか正直なところ戸惑った。しかしいざ審査をしてみると、ごった煮状態の審査が反対に既存のジャンルのなかの理論だけで評価するのでは見えてこなかった評価の方向を見せてくれたように感じている。
技術の進歩によって、かつてないほどの変化があらゆるエンターテインメント作品に起こっている時代のなかで、制作者は"新たな作品と人との関係"という新しい課題を与えられているように感じられる。
今回大賞に選ばれた『TENORI-ON』はその作品としてのすばらしさや楽しさは当然のことながら、プロジェクト自体が象徴的で革新的であり、また、このプロダクトを使って新たな作品が生まれる可能性までもが作品のなかに含まれている。ほかの受賞作品も同じように表現のおもしろさにとどまらない何かを持っているものばかりとなったのは偶然ではないと思う。

プロフィール
田中 秀幸
映像ディレクター、アートディレクターとして活動中。