14回 アニメーション部門 講評

文化・表現・世代的にも節目の年

審査委員を拝命したときから「今年の選定は難しくなるぞ」と覚悟していた。業務を通じて見てきた範囲だけでもかなりの意欲作・異色作が多く、バリエーションも豊かな当たり年だと思っていたからだ。その予想通り、審査も激戦となってしまった。涙を飲んで絞り込む局面も多く、大賞選定に際しても白熱の議論が続いた。現在パッケージ販売は曲がり角に来て、商業的に厳しい時期を迎えているが、劇場公開作品では3?5年準備をしてきたユニークな企画が続々と結実した。文化的にも表現的にもクリエイターと観客の世代的にも、おそらく今年がアニメーションにとっての大きな節目に位置付けられるはずだ。短編作品では各国における表現の幅やテーマの多様性が興味深かった。こなれたCG表現に驚きを感じる一方、原点回帰的な柔らかくも激しい躍動感を重視した手描き作品も強く印象に残った。

プロフィール
氷川 竜介
1958年、兵庫県生まれ。東京工業大学工学部電気電子工学科卒業。在学中からアニメーション特撮専門のマスコミで、雑誌編集、音楽アルバム構成、執筆などの活動を行なう。IT系企業での技術者・管理職経験を経て文筆業で独立。雑誌やビデオグラム、ウェブなどに多角的な解説文を提供。テレビ番組『BSアニメ夜話』では「アニメマエストロ」のコーナーを担当、バンダイチャンネルのネット配信作品解説、池袋コミュニティ・カレッジで講師を務めるなど多方面で活躍中。著書に『20年目のザンボット3』(太田出版、1997)、『アキラ・アーカイヴ』(講談社、2002)など。