15回 アニメーション部門 講評

人材を育成し、世界へ発信する芸術祭へ

今回は2つの意味で困難な審査だった。1つは審査のための鑑賞条件が統一されず、膨大な作品を様々なメディアで観なければならなかったこと。理由としてはこれからさらに一般化が予想されるWeb応募とDVD、ブルーレイなどが混在する過度期ゆえの状況であり、もう1つはプロダクトとして成長してきた「アニメ」の系譜と、個人作家を核に進化してきたアートを含むインディペンデント作品群の「異質」な価値を同じステージで審査する矛盾がさらに顕著化したことによる。大賞を巡っての『魔法少女まどか☆マギカ』と『マイブリッジの糸』の拮抗がそれを象徴していた。
担当した短編の特徴は、フランス、ドイツの名門校からの応募が集中したこと、そして短編自体の応募数が減少したことだろうか。躍進著しいアジア諸国からの出品が少ない一面も感じた。
海外では3DCG映像などを駆使した芸術表現追求も盛んでグループワークも一般的なのに対し、日本の短編はいまだ「個人手づくり信仰」「技術に対して消極的な空気」が若手才能の創作の向上を妨げている傾向を感じる。解決に向けて国ができることもあるはずだ。同時に本文化庁メディア芸術祭の独自のスタイルを世界にいかに発信するか、指針を巡る討論がもっとされるべきなのだ。
今年からスタートした「新人賞」や今までの若手受賞者を対象とした人材育成支援プロジェクトの実施など、前進する本芸術祭自体のバリューをもっと広めて国内クリエイターの関心を高め、来年以降の出品作のさらなる活性化に期待したい。

プロフィール
伊藤 有壱
クレイを中心に幅広く活動するアニメーションディレクター。