8回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インスタレーション

これまでメディアアートにおけるインスタレーション作品というと、テクノロジーの進歩への批判的視点、またはテクノロジーの教育的な伝達といったものが多かった。しかし今回の受賞作品では、あきらかに「観客」を意識して空間演出を行う、「映画的インスタレーション」が増えてきた。エンターテインメント性が増えたそれらの作品は「思想」よりも「スタイル」が重視されており、作家個人の深みや毒がない分、大衆に伝播する可能性を持っている。大賞を受賞した『3 minutes2』は、手法そのものは映像の立体空間へのプロジェクションという単純な方法をとりながら、その演出がSF映画で何度も見てきた未来生活そのものであり、見事に視覚的な快感を生み出している。観客への問題提起はないが、同時代のカルチャーに訴える力があり、デジタルアートが本来持っているポップ性が素直に出た作品である。

プロフィール
土佐 信道
明和電機
1993年にアートユニット「明和電機」を結成。ユニット名は彼らの父親が過去に経営していた会社名からとったもの。プロモーション展開は既成の芸術の枠にとらわれることなく多岐にわたり、展覧会やライブパフォーマンスはもちろんのこと、CDやビデオの制作、本の執筆、作品をおもちゃや電気製品に落とし込んでの大量流通など、たえず新しい方法論を模索している。2007年は、岡山市デジタルミュージアムにおいて、個展「ナンセンス=マシーンズ展2007」を7月13日〜8月19日の期間開催。また、谷川俊太郎さんとの共作絵本の発売や、全国各地でのワークショップの開催など、多岐にわたる活動を予定。海外でも、フランス、シンガポール、ワシントンと公演を予定しており、ワールドワイドに活動している。1993年 ソニー・ミュージックエンタテインメント第2回アート・アーティストオーディション大賞受賞。2000年 グッドデザイン賞受賞(人間初受賞)新領域デザイン部門。2003年 アルスエレクトロニカ・インタラクティブアート部門 準グランプリ受賞など。