10回 アニメーション部門 講評

【作品カテゴリ別講評】劇場アニメーション・テレビアニメーション・OVA

初めてすべての応募作品に目を通して驚くのはその作画水準の高さである。もちろん選び抜いて、ということもあるだろうがすべての作品の品質は大変に高い。
過酷な条件の中でつくられているであろうTVシリーズでも、長編作品と拮抗できるほどの作品を数多く見ることができた。現在デジタル化もほぼ完了しつつあるインフラの整備のなすわざなのか、スタッフの力量の成熟なのか、かつて散見されたクオリティのばらつきはまったくといっていいほど感じられない。「通商産業」という視点においては驚くべき成果といえる。
一方で「文化」としてはどうだろう。あまりにも特殊な物語や人物の設定を構築したおかげで、その説明に終始するものが多すぎないか?
ビジュアルの追求に対して、作品の骨格をなして観る者に情緒を伝達する演出が疎かになっていないか?爛熟の様相を呈しながら、同時に救いのない閉塞感もまた感じてしまった。
観客のハードルは年々高くなるのだ。ここまで条件は揃っているのだから、あとはやるべきことを見極めてやるだけだと思う。がんばりましょう!

プロフィール
樋口 真嗣
1965年、東京都生まれ。映画監督・特技監督。平成ガメラシリーズでは特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作品に『ローレライ』(2005)、『日本沈没』(2006)、『のぼうの城』(2012)など。