7回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】静止画

デジタルアートというと映像やインタラクティブ(双方向)な作品をイメージする人が多いと思う。しかし静止画の面白さを多くの人は知らないか忘れている。私は、今年度の審査でその静止画の持つ面白さと可能性を十分に感じることができた。これまで私も多くの人と同じくデジタルアートの静止画はその方向性のバリエーションの少なさ故に、映像やインタラクティブ作品に比べ、それへの興味はあまり高くはなかった。しかし、デジタルの進化は静止画の方向性をも多様化させ、非常に面白い時代になってきた。特筆すべきは若いクリエイターの作品のレベルが上がり、プロのクリエイターと肩を並べてその質を競うまでになってきた。これもデジタル技術の進化なくしては考えられないことである。そして内容もこれまで蓄積された高い技術を存分に使い、さらに新しい技術を加え、見応えのある作品に仕上げられた作品群や全く新しい概念を静止画として表現されたものまで登場し、国際的な公募展の静止画として納得のいく審査となった。あえて課題を挙げるならば、作品を提出される際のその大きさや体裁にばらつきがあり、内容のよさが十分にその表面的な問題で発揮できない作品も多くあった気がする。個々の作品の持つ力を十分に発揮していただくために、今後は是非気をつけていただきたいと感じた。1時間以上に及ぶ映像よりも一枚の静止画が人の心をうつこともある。そんな静止画にたくさん出会えた審査であった。

プロフィール
中谷 日出
NHK解説委員
神奈川県出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。NHKのロゴマークデザイン、NHKスペシャル『人体・脳と心』のアートディレクション、ハイビジョンドラマ『DREAM TV 200X』監督など。また、2001年より『デジタル・スタジアム』、小学校高学年用メディアリテラシー番組『体験!メディアのABC』キャスターを、『趣味悠々デジタルビデオを使いこなそう』では講師を務める。Gマーク(グッドデザイン賞)選定委員。