8回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】映像

今年度のアート部門の映像作品は、過去最高の192点の応募があった。海外からの応募も多く、審査も自然にグローバルな視点をもって行うことになった。今年度の応募作品は例年と比べて著しくレベルが向上したと思う。特に海外作品はバリエーションが豊かで完成度が高い作品が目立った。一方、日本の作品では若いクリエーターの台頭が目立った。若いクリエーターは既存のソフトウエアに頼るだけでなく、自ら様々な方法を模索し表現の完成度をあげ、若さあふれるチャレンジ精神がよい方向に現れている。そしてアート部門という枠に対してもチャレンジしている感があった。従来の実験的な試みに加え、観るものを飽きさせないエンターテインメント性をも持たせながら、現代的な映像表現にまで昇華している作品が数多く見受けられた。今年度優秀賞を獲得した作品は、デジタルとアナログという壁だけではなく、映像表現のいくつかの壁を乗り越えた労作である。この作品が現代の映像表現の可能性を身をもって見せている気がした。

プロフィール
中谷 日出
NHK解説委員
神奈川県出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。NHKのロゴマークデザイン、NHKスペシャル『人体・脳と心』のアートディレクション、ハイビジョンドラマ『DREAM TV 200X』監督など。また、2001年より『デジタル・スタジアム』、小学校高学年用メディアリテラシー番組『体験!メディアのABC』キャスターを、『趣味悠々デジタルビデオを使いこなそう』では講師を務める。Gマーク(グッドデザイン賞)選定委員。