12回 エンターテインメント部門 講評

【作品カテゴリ別講評】Web

今年度の応募も、剪定されずに伸びきった盆栽のごとく、どの視点から見るべきかわからず、同時にどこから見ても何もないという作品が多かったのは残念である。コンセプトだけが立派だったり、ひとりよがりの表現に始終したり、単に最新技術に飛びついてみたり、一発芸を羅列したり。それを「これはメディア芸術です」と言われても困る。それらをふるい落とし、コンテンツ表現に優れたもの、独自性の高いもの、チャレンジがあり、美しく、楽しく、驚きのある秀逸な作品を選出して最終審査会で審議した。今年度は時代を反映してか、携帯を連動して新たなコミュニケーションを成立させようとする企画が多く見られたが、そうした複合型の作品群を凌駕して『FONTPARK 2.0』が優秀賞に選ばれた。"体験の質の高さ"が鍵となってこの作品が選出されたのは意味深い。また、今年度も企業の広告キャンペーンの応募が多かったが、なかでも環境意識を啓蒙する『driveeverydrop.com』と、そのCMの『Drop』は秀逸であった。結果的に賞に至らなかったが、映像とWeb両部門の最終審査で上位に残り、高く評価されたことをつけ加えておきたい。

プロフィール
福井 信蔵
クリエイティブディレクター
1959年神戸市生まれ。アパレル出身の経験を生かし、ファッションブランドの広告やブランディングを多数手がけた後、独立。1994年ウェブデザインを独学で開始。2000年、デザイン集団「ビジネス・アーキテクツ」を設立。数々のグローバル企業にWebを軸としたクリエイティブサービスを展開。2005年、同社を退社。2008年、グローバルなコミュニケーション戦略を実装するSG&A設立。1995年ロンドン国際広告賞、1995年GRAPHIS DESIGN、1999年Web Design Award金賞、2003年One Show Gold、2004年One Show Bronze、2005年Communication Artsなど、国際的なデザイン賞を多数受賞。