9回 アート部門 講評

日本の作家の活躍は、メディアアート活性化の表れ

今年も全応募作品の半数近くが集中し、選に残った作品はいずれもレベルが高く、テーマや表現も多彩で賞の決定は困難を極めた。とくにインタラクティブ作品(インスタレーションとしての応募も含め)と映像の質が高く、コンセプトの強いもの、ユーモアや懐かしさを交えてメディアの断面を提示するもの、意表を突く技術によってアートに新たな可能性を切り拓くものなど、オリジナリティと表現や技術のバランス、完成度の高さが目立った。それに比べて静止画とウェブ作品は残念ながら精彩を欠いた。今回、審査終了後に初めて受賞作品に占める日本の作家の多さに気づき、驚きの声があがった。海外から有力作品が多く集まるアート部門での日本の作家の予想以上の活躍は、近年の日本のメディアアートの活性化、特に若手作家の層が厚くなったことの表れだろう。

プロフィール
草原 真知子
早稲田大学教授
1980年代前半からメディアアートのキュレーションと批評、メディア論研究で国際的に活動。筑波科学博、名古屋デザイン博、神戸夢博、NTT/ICCなどの展示のほか、SIGGRAPH、Ars Electronica、ISEAなど多くの国際公募展の審査に関わる。講演、著作多数。デジタルメディア技術と芸術、文化、社会との相関関係が研究テーマ。UCLA芸術学部客員教授。工学博士。