24回 マンガ部門 講評

伝わってくる作者の熱

受賞作品および推薦作品を見てもらうとわかるようにさまざまなジャンルのマンガ作品が集まっている。そのなかから受賞作品を選ばなければならなかったのだが、それはスポーツの世界でいうと陸上のマラソン、水泳の平泳ぎ、テニス、トライアスロン等いろいろなスポーツのトップアスリートが集まっているなかで一番を決めるようなもので、非常に難しいことであった。大賞から新人賞までのいずれの賞も最初から審査委員一同満場一致という作品はなかったので各賞の候補に上った作品について審査委員一人ひとりの意見を聞きながら絞り込んで選考を進めた。審査しながら私がマンガを描き始めた高校1年生の頃のペンを手にしてインクで紙の原稿用紙に描いていた時代を思い出していた。あれから50年、今でも変わらずペンとインクで描いている。最近はタブレットにペンでパソコン画面にマンガを描いている人が増えているそうだ。昔ながらの描き方をアナログ、パソコンを使って描く描き方をデジタルと呼んでいるのだが、今回審査した作品のなかにもデジタルで描かれたマンガ作品が多くあった。一見してデジタルとわかる作品もあるのだがアナログに見えて実はデジタルという作品もある。しかし審査にはデジタルもアナログも新人もベテランも関係ない。今目の前に見えているマンガだけが審査対象なのだから。では、どのような作品が最終審査に残るかというと結局は作者のマンガに対する情熱の強さであろうと思う。若い人は真っすぐな気持ちを、ベテランは長い間に築き上げてきた自分なりのこだわりを画面に表している。そして作者がマンガ原稿に込める熱量が読む者の心を動かす。激しいアクションマンガもあれば静かなゆったりとしたマンガもある。どちらも作者の強い情熱によって描かれている。その情熱を上手く紙面に表すことができるかどうかが評価の差になった。今一度受賞作品を読んでもらいたい。それぞれに個性あふれる作者の強く熱い想いが伝わってこないだろうか。

プロフィール
倉田 よしみ
マンガ家/大手前大学教授
1954年生まれ。秋田市出身。高校卒業後ちばてつや先生に師事。5年半のアシスタント生活を経て独立。第4回小学館新人コミック大賞に入選。入選作「萌え出ずる・・・」でデビュー。1984年から描きはじめた「味いちもんめ」で1999年第44回小学館漫画賞受賞。「味いちもんめ」は現在も連載中。平成21年から大手前大学で教鞭をとり始める。日本の学生だけでなく世界各地、中国、韓国、台湾、マレーシア、パリ、シアトル、モンゴル、ウクライナでワークショップを開く。マンガジャパン会員、日本漫画家協会理事。外務省日本国際漫画賞、漫画家協会漫画賞、中国広州金龍賞、マレーシア新人漫画賞等の審査員を務める。