14回 アート部門 講評

ロボットという記号の意味の変遷

メディアアートに含まれるメディアの概念は、その時代や年により、記号としての意味を常に変え続けている。例えばロボットから得られる意味は、先端的な新しい技術とともに、過去から見た未来というアナロジーを引き出し、人間により近付いたロボットの出現によって、前現代的語彙としての印象を強調する。一方、環境という神が創ったロボティクスは、先端技術により人間の手で環境ロボットとして社会を形づくる社会エージェントとして浸透していくのだろうか。われわれはロボティクスに対する評価を、機能美や機構美から発生した社会的機能性に評価を与えていたにせよ、芸術的接続を予感せざるを得ない。かつてのキネティックアートの作品群が情報技術で繰り返されつつある状況の中、今回の審査では、完成された外観や唐突な組み合わせに芸術性を感じてしまう作品を、自分自身「認めてしまうのだな」ということも知った。

プロフィール
関口 敦仁
情報科学芸術大学院大学(IAMAS)学長
1958年、東京生まれ。東京藝術大学美術学部卒業、同大学院修了。80年より美術作家として絵画やメディアインスタレーションを主に発表。96年より岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー教授、2001年より情報科学芸術大学院大学教授を務め、現在、同大学(IAMAS)学長。メディア芸術や情報デザインでの活動のほか、美術情報学、芸術史、伝統芸術、考古学のアーカイブ表示研究などを行っている。主な作品に『地球の作り方』『景観シリーズ』、著書に『デジタル洛中洛外図屏風[島根県美本]』(共著、淡交社)などがある。