14回 エンターテインメント部門 講評

大きな曲がり角の先にあるもの

広告に本籍を置く身として残念だったのは、平均して「広告」が魅力的でなかった点です。かつては広告から、新しい表現や人々の心をつかむアイデアが世に広まっていった時代もありました。しかし今やそれはMVやインタラクティブアートから生まれてきます。実際これらの領域には刺激的な作品が数多く散見されました。同じようにゲームにもやや停滞感が感じられました。もちろんこの1年、やり応えのある作品が数多くリリースされましたが、それらのほとんどはいわゆる「続編」もので、世に新しい「遊び」を提示してきた過去の受賞作品に比べると、斬新さに欠ける印象があります。その一方で、MVの魅力的な作品は、従来の映像手法ではなく、新しい視覚体験の提供に挑戦していました。エンターテインメントそのものが、大きな曲がり角を迎えているのかもしれません。それは逆に「これから」が楽しみなことでもあります。

プロフィール
内山 光司
クリエイティブディレクター
1961年、埼玉生まれ。広告、エンターテインメント、テクノロジーの3つが交わるところを活動の場とし、クリエイティブエージェンシーや制作プロダクションの枠にとどまらず、デジタルコミュニケーションとエンターテインメントのアイデアを融合した先進的なマーケティングソリューションの提供を行っている。カンヌ国際広告祭での金賞を3度獲得しているほか、世界中のさまざまな広告賞、デザイン賞を受賞。メディア芸術祭では優秀作品賞2回、審査委員会推薦作品4回獲得。