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第24回 エンターテインメント部門 ソーシャル・インパクト賞

分⾝ロボットカフェ DAWN ver.β

プロダクト

『分⾝ロボットカフェ DAWN ver.β』制作チーム(代表:吉藤 健太朗)[日本]

作品概要

寝たきりや移動が不⾃由な状態でも操作できる分⾝ロボット「OriHime」を開発し、それを活用して障害者雇⽤を促進する社会実装プロジェクト。ロボットは視線⼊⼒・マウス・スマートフォン⼊⼒など、幅広い肢体障害に対応すべく工夫が凝らされており、その操作も容易である。企業の協賛やクラウドファンディングで資⾦を集め、2019年10⽉7⽇に「分身ロボットカフェ」という3週間限定の店舗を東京・大手町にオープン。障害者や外出困難者30⼈が「分⾝ロボット」で接客を⾏った。この施策をきっかけに⼀般企業に採⽤された参加者もおり、メディアでも取り上げられるなど多くの社会的な反響を呼んだ。⽇本での肢体不⾃由者の就職率は約5%で、当事者たちも企業への就職を諦めている。人手不足解消の⼿段としてのロボットに期待が⾼まるなか、障害者雇⽤が不⼗分な社会に対しての疑問と解決策を提示した。

贈賞理由

私は最近「技術の発展の方向性」というものに興味がある。その方向性は、誰が開発するか、誰に力を与えるか、それらによってその後の私たちの生活が大幅に変わる。SFを読めば遠隔操作の肉体で活動するというコンセプトは少なくとも70年代にはすでに描かれているものの、ロボットが大量生産され社会に浸透しはじめてから、思うように動けなかったり外に出られない人たちが社会で自立していくという目的のために実際にロボットをつくったり応用した人はどれだけいただろうか。「いつか自分も動けなくなるかもしれない、怖い」。このプロジェクトはそんな恐怖にひとつの光明を射したといえるし、自分が社会的弱者になることを微塵も考えたことのない人も含めたさらに多くの人々にとっても、例えば将来、一層ひどいパンデミックなどが起きたときも、必要な技術になりうるだろう。今後とも研究ならびに社会実装を頑張って欲しい。(長谷川 愛)