©Christian Werner & Isabelle Buckow

第19回 エンターテインメント部門 新人賞

Black Death

ウェブ、ルポルタージュ

Christian WERNER / Isabelle BUCKOW

作品概要

テキスト、映像、写真、音声、地図、アニメーションなどさまざまなメディアを用いて、ウェブサイト上でスクロールしながら読む、新しい形式のルポタージュである。エルシニア感染症、あるいは「黒死病(BlackDeath)」と呼ばれるペストは、歴史上の病として知られる。中世ヨーロッパにおけるペストの流行は人口を大きく減少させた。近年、ペストは衛生状態の改善や医療技術の向上により、地球上の大部分ではおおむね根絶された。それでもアフリカ、ロシア、アジア、そして米国でさえも、依然としてペストは発症しており、2009年以降、年間平均500件の症例が記録されている。複数の表現方法を用いたこの作品は、物語や情報の伝達について、シンプルながらも新しい方法を指し示している。

贈賞理由

シリアスな問題に真正面から向き合い、自ら赴き、パーソナルな生と死に立ち会い、普遍的メッセージに仕立てた。情緒的にならず、一見淡々と、演出的編集もなく提示され、それでいて、それらは意図的であって、ゆえに切実なものとして迫ってくる。見るにもエネルギーを要するこの作品の、制作に注がれたエネルギーと葛藤はいかばかりだろう。その行動と視線、クオリティに対して敬意を表したい。それが、若い作者によってなされているということに、今の時代の風を感じるし、テーマは重いが、その重さを直視する人の存在に、希望が見出される。(東泉 一郎)