©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014
原作:臼井儀人(らくだ社)|監督:髙橋渉|脚本:中島かずき|キャラクター
デザイン:大塚正実/原勝徳|制作:シンエイ動画

第18回 アニメーション部門 優秀賞

映画クレヨンしんちゃん「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」

劇場アニメーション

髙橋 渉

作品概要

埼玉県春日部に住む野原家は5歳の主人公・しんのすけと父・ひろし、母・みさえ、妹・ひまわりの4人家族。ある日、父・ひろしがロボットに改造されて帰ってくる。最初は戸惑う一同だが「ロボひろし」の奮闘により、次第に心を通わせ家族の絆を深めていく。しかし、すべては父性の復権をもくろむ組織によって仕組まれたことだった。ロボひろしの暴走をきっかけにその事実を知る野原一家。また、生身のひろしが生きていることも発覚する。自分がコピーであることに衝撃を受けるロボひろしだが、家族を守るために組織の陰謀に立ち向かう―。シリーズ第22弾となる本作では、初めて父親のひろしにスポットを当て、姿形はどうであれ父親であろうとするひろしと、父は父であると自然に受け止めるしんのすけの姿を通して、現代の父子のあり方が描かれる。

贈賞理由

脚本を担当している中島かずきの構成が実に素晴らしく、エンターテインメントの大切な要素が生かされていると感じる。そこにはキャラクターの持つ魅力があふれているのだ。良い作品には必ず「愛すべきキャラクター」が住んでいる。愛すべきキャラクターの生活を描くことによって、そのキャラクターが住む街が攻撃されるなどの危険が迫ると、観客は自然と感情移入し、応援したくなる。魅力あるキャラクターが完成すれば、後は箱庭(作品としてのフォーマット)に放てばよい。その魅力で、自由に、生き生きと遊び始めてくれる。今回の作品にはそういった魅力を強く感じた。魅力ある世界を作るには、人間臭い部分を丁寧に表現する事が大切だと感じる。「しんちゃん」や家族達が繰り出すチームプレイや、アニメーションの良さである弾みのある「動き」が、制作スタッフのチームプレイとシンクロしているようで、作り手のポジティブさが作品を通して伝わってくる。こういったスタッフの熱量を感じられる作品もなかなか少ない。(森本 晃司)