©Goda Yoshiie / SHOGAKUKAN

第19回 マンガ部門 優秀賞

機械仕掛けの愛

業田 良家

作品概要

“心”に似た機能を持つロボットたちが、近未来の地球各地で織りなすさまざまな寓話からなるオムニバス集。持ち主に飽きられたロボットの女の子が、愛された記憶を頼りに“お母さん”を捜す「ペットロボ」、人間の遺言で自由を手に入れた介護ロボの苦悩を描く「介護ロボ広沢さん」、思い出を託された執事ロボが、主人との約束を果たすために選んだ道を追う「リックの思い出」など、人間のために働くロボットたちを軸に、物語は展開される。
街にたたずむ自販機ロボ、本を愛する刑事ロボなど、プログラムされた機能を果たしているだけの彼らは、その純粋な“機能”をもって、人間たちに語りかける。これまで「人生に意味はあるか」「人間の想いは永遠であるか」などのテーマを描いてきた作者が、ロボットの営みを通して「人間とは何か」「“心”とは何か」を表現した作品である。

贈賞理由

ロボットを題材にしたマンガは今までに数多く発表されているが、そのほとんどは子ども向けにつくられてきた。本来ロボットは心を持たない。心を持たないロボットに人間は勝手にさまざまな想いを寄せる。
本作は絵柄もストーリーも、一見するとじつにオーソドックスだが、構図や構成では、マンガの基本がきっちりと守られているため読みやすい。そして、隙がなく描き馴れた技法は確かなプロであることを物語っている。
それぞれのストーリーに登場するロボットの持つ宿命と、主人となる人間を待つ運命。心のないロボットが心を持つときとは、人間がロボットに愛情を注いだときに起こる奇跡だと教えてくれる。行き過ぎた奇は狙わず、哀しみ、愛、そして闇をロボットという素材を使い、読む者の心を優しくゆさぶる物語は、大人向けの秀逸な作品であった。(犬木 加奈子)