©︎ MONOCOLOR / Photo: Johannes Hucek

第23回 アート部門 新人賞

Latent Space

メディアパフォーマンス

Marian ESSL [オーストリア]

作品概要

ドーム状の空間に繊細な光の線が投影され、仮想空間をつくり出す。現れた構造物は非常に脆弱で、常にその形状を変化させる。拡大と縮小を繰り返しながら、時に崩壊し、薄いヴェールのように揺らぎ、細かい粒子となって霧散する。空間には、静かな音が吸い込まれるように流れ続ける。ゆっくりと変化し続ける構造物と音響がドーム全体を満たし、鑑賞者を包み込む。ドーム内の物理的空間に光の構造物として顕現した仮想空間は、デジタル空間の無限性を明らかにする。本作はドームの空間的効果を探究するものだが、ドームは常に私たちを取り囲んでいる仮想ネットワークの隠喩ともなっている。

贈賞理由

本作が観る側に与える没入感は、ドームの実空間を精密に調査した上で投影される像自体の精度だけでなく、ライブで生成されていくオーディヴィジュアルによって、人間の空間認識に錯覚を起こさせるような体験を可能にしている点にある。コーディングを行わずともクリエイティブなプログラミングを実現可能にするソフトウェアの開発が進んだことで、三次元上の表現の可能性は大幅に広がっている。本作は、2Dと3Dを横断する幾何学的グラフィックが構築したような、時間や現実感覚などの観る側の知覚に関わる美学的表現を三次元上で深めていく試みになっている。(田坂 博子)