© Lawrence MALSTAF

第13回 アート部門 優秀賞

Nemo Observatorium

インスタレーション

Lawrence MALSTAF [ベルギー]

作品概要

白い微粒子が巨大透明シリンダーのなかを舞っている。鑑賞者は渦の真中の肘掛け椅子に座るか、外から眺める。嵐の目のなかは静かで安全だ。この壮大な瞑想マシンのなかで、微粒子が描く模様を追い、3Dピクセルの層を見つめ、轟く音に耳を澄ませる。めまぐるしく変わる環境のなかで静けさを見出すことに挑戦する訓練装置ともいえる。

贈賞理由

透明の円筒の中央に椅子があり、鑑賞者が座ってスイッチを押すと、気流により大量の発泡スチロールの粒で可視化された竜巻が起こる。円筒の内側の面を滑るように激しく回転する発泡スチロールの粒は、鑑賞者にはぶつかることがなく、そのダイナミックな動きが描き出す模様を、体感しながら鑑賞することができる。自然現象をモチーフにし、物理的な演算を使用したりする作品の多くが、それらを音楽やCGをつくる際の有機的な変数として安易に利用しているのに対して、この作品ではあくまで現象そのものを切り出して単純明快に提示しているところに、新鮮さと力強さがある。そこにはコンセプトや理屈を超えて、とりあえずそのなかに入ってみたいという、好奇心を刺激されずにはおられない魅力がある。また、洗練されたアートとしての側面だけではなく、どこか昔のSF映画のセットや遊園地のアトラクションを彷彿とさせるような、懐かしさも感じさせる。