© 2016 NO SALT RESTAURANT Committee (J. Walter Thompson Japan / The University of Tokyo / aircord / AOI Pro. / vector Group SIGNAL, Inc. / Ishii Clinic)

第20回 エンターテインメント部門 優秀賞

NO SALT RESTAURANT

ガジェット、プロジェクト

川嵜 鋼平/中野 友彦/中村 裕美/橋本 俊行/宇田川 和樹/天野 渉[日本]

作品概要

『ELECTRO FORK』と『無塩料理のフルコース』を用いたプロジェクト。作者らは食品を経由して舌に電気刺激を与え、「電気味覚」によって食べ物の味をコントロールできる『ELECTRO FORK』を開発。また、この『ELECTRO FORK』で食事をした場合に、より塩味を感じやすい無塩料理のレシピの検証を重ね、『無塩料理のフルコース』も提案している。塩分の摂取過多によって引き起こされる、高血圧症や脳卒中などの患者は、塩味の利いた食事を取ることができない。本作では、無塩の料理でも塩味を感じることができ、病気を気にせず「おいしいもの」を味わえるため、「患者たちの健康」と「塩味の利いたおいしい食事」を両立させている。このプロジェクトを通し、世界中の塩分問題を解決し、健康的な食文化、食生活に変えていくことを目指している。

贈賞理由

高血圧症や脳卒中は中高年層にとっては深刻な問題だ。それに対する有効な手段は塩分摂取制限だが、塩味はほかの味覚にも影響を与える重要な要素であり、高齢化に従って味覚感受性自体が減退していくことを考慮すると、実行には困難が伴う。本作は塩分過剰摂取問題に対し福音となる可能性を持った、人間の健康に技術で応える画期的なガジェットであり、それを用いたプロジェクトでもある。五感のなかで味覚は現在最も再現が難しい感覚であり、塩味に限定してはいるものの味覚ディスプレイ技術を応用しており、新技術の実用としての価値も高い。おいしい食事は人生で最も身近な楽しみであり、食自体がエンターテインメントとして、グルメや大食いなどさまざまな切り口で取り上げられている。これらは実際に自分で体験できる点でほかの娯楽と並ぶが、料理はクリエイティブであり、簡単につくることもできる点でほかの娯楽より日常に即している。そんな日常に技術で潤いを与える素晴らしい作品だ。(遠藤 雅伸)