第25回 アート部門 新人賞

三千年後への投写術

メディアインスタレーション

平瀬 ミキ[日本]

作品概要

ディスプレイやプロジェクターに代表されるように、図像を見るという体験は、いまや電気を前提にすることが多くなっている。電力の逼迫や資源不足といったエネルギー問題から連想し、作者は電力が失われた時代における視覚体験を作品化した。半永久的に残り続ける記録媒体として石に着目し、鏡面加工された石にレーザーを用いて写真や文字を彫刻し、その表面に光源を当て、反射した光によって図像を壁面に写し出している。同作は記録媒体として古くから用いられている石という素材に、精密な加工技術を施すことによって、電力の使用を前提としない、三千年後にも残りうる可能性を持つ新たな記録媒体としてのあり方を提示した。

贈賞理由

作家は、メディア環境における彫刻作品やSNSやデータをテーマとしたインスタレーションによって、メディアを通してものを見ることを再考させる試みを行ってきた。本作では、記録媒体としての石に着目し、レーザー加工機で石材に施された写真彫刻に光をあて、黎明期の映像メディアを想起させながらも、未来へ記録の痕跡を残すような、アーカイブの可能性も示唆している。歴史的な文脈をさかのぼりつつ、現代のテクノロジーを用いた表現として結実している点に本作の醍醐味がある。(田坂 博子)