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第20回 エンターテインメント部門 大賞

シン・ゴジラ

映像

庵野 秀明/樋口 真嗣[日本]

作品概要

特撮映画シリーズ『ゴジラ』の12年ぶりとなる最新作。日本に襲来したゴジラという虚構の巨大生物に官僚や政治家が立ち向かう群像劇。東京湾に突如現われた巨大生物に対する政府による緊急対策本部の設置、自衛隊への防衛出動命令の発動など、政治的視点を中心に物語は進む。「現代日本に初めてゴジラが現われた時、日本人はどう立ち向かうのか」をテーマに、その社会状況を現実に忠実に再現し、リアリティを追求した災害シミュレーションをドキュメンタリータッチで描いた本作は、子どもやファミリー向けの作風であった従来の『ゴジラ』シリーズに対して異色のアプローチとなり、特撮や怪獣映画に関心のない層からも注目を浴びた。本作に登場するゴジラは国内シリーズ初のフルCGで史上最大となる体長118.5mのスケールで描かれ、建物を破壊しながら都内を徘徊する姿は多くの観客を圧倒した。脚本・総監督は、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995―96)などを手がけた庵野秀明、監督・特技監督には樋口真嗣が起用された。キャストは計329人におよび、さらには日本映画では異例の3監督・4班体制、総勢1,000人以上のスタッフによる大規模撮影となった。

贈賞理由

大ヒットし、しかも映画として評価されるだろう作品に、エンターテインメント部門の贈賞が必要だろうかという反論もあった。しかし、2016年を振り返ったときにまっ先に思い出す作品であり、圧倒的なパワーを持っている。そのことは、あらゆる手を使って記録されるべきだろう。ウェットな人間ドラマを排し、ガチの本土決戦シミュレーションとしてブレないつくり。つくりたいエンターテインメントを信念を貫いて産みだした映像が、大ヒットになったことも嬉しい。邦画のつくり方そのものが、ここから変わっていくのではないか。アニメーションや特撮資料のアーカイブ化の推進にもつながっていく未来を想像し、希望を抱く。庵野秀明総監督や樋口真嗣監督、尾上克郎准監督を頭として、日本の特撮やアニメーション、実写のスタッフと技術が集結した鮮烈な映像作品は、作品制作現場における思考停止およびルーティン化していた部分を破壊し、新しいステージに進んだ。その記念碑としても、大賞にふさわしい。(米光 一成)