©2014 Slime Synthesizer

第18回 エンターテインメント部門 新人賞

Slime Synthesizer

サウンドデバイス

ドリタ/エアガレージラボ(川内 尚文/佐々木 有美)

作品概要

本作は全く新しい演奏体験をもたらす流動体、不定形のシンセサイザーだ。スライムを触る、あるいは変形させることで音が変わるこのサウンドデバイスは、まるで音の雲を摑んでいるような音波を作り出すことができる。シンセサイザー本体と自分をつなぎ、別の接点をスライムにつなげることで、スライムを触ったときに音が出る仕組みだ。本作は「ワーボ・フォルマント・オーゲル」(1937年)、レイモンド・スコットのシンセサイザー「Clavivox」(52年)、そしてロバート・モーグの「モーグ・シンセサイザー」(64年)以降、かつてない不定形のシンセサイザーを志向する楽器でもある。また音を生み出すこと、音を変化させることに特化しているため、音階を出すことにこだわらず、リズムボックスとしての機能も持ち合わせている。

贈賞理由

溶解するオシレーター、液化するLFO(Low Frequency Oscillator)、解凍されるエンベロープ……。このシンセサイザーは、不定形の流動体であるスライムがパラメータとなり、演奏中の身体がスライムを媒介にテクノロジーとの融合を果たす。小説家、ウィリアム・S・バロウズが提唱した『ソフトマシーン』が女性型アンドロイドを想定するならば、これは、液状型トラウトニウムだ。原生生物の想いに浸れ!(宇川 直宏)