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第17回 エンターテインメント部門 大賞

Sound of Honda / Ayrton Senna 1989

映像、ウェブ、メディアインスタレーション、サウンド

菅野 薫/保持 壮太郎/大来 優/Nadya KIRILLOVA/米澤 香子/関根 光才/澤井 妙治/真鍋 大度

作品概要

走行データを用いてドライブをデザインする本田技研工業のカーナビゲーションシステム「インターナビ」。その独自の技術と歴史をひもとくため、1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光でよみがえらせた。エンジンやアクセルの動きを解析し、実際のMP4/5マシンから録音したさまざまな回転数の音色と組み合わせることで、当時のエンジン音を再現。全長5,807mの鈴鹿サーキット上に無数のスピーカーとLEDを設置し、再現した音を走行データに合わせて鳴らすことで、24年前の走りを表現した。特設サイトではWebGL(ウェブページ上で3Dグラフィックスを表示する標準規格)により当時のラップタイム“1分38秒041”を3DCGで再現し、セナの走りを体感できるコンテンツを公開。加えて、当時のエンジン音を自分のクルマで楽しむことができるスマートフォン用のアプリも開発・配布された。

贈賞理由

ホンダのエンジニアによって記録された走行データをグラフ化した紙1枚から、セナのエンジン音を再現しようとした発案そのものが面白く、総力を尽くして巨大な再現インスタレーションへと変貌させたプロジェクトである。サンプリングとチューニングされたエンジン音を聞くだけで、鑑賞者の脳の奥に仕舞われていたはずの思い出深い空間データが見事に引き出され、映像として脳裏によみがえり始める。次第に時間を超えてそこに立っているかのような錯覚に陥ってしまい、スロットル開度データに基づいて微妙に振れ動くアクセル挙動を見ていると、今度は「セナ足」の映像が想起されるなど、作者の「データが人の心を動かすことが出来るか」という挑戦とその成果が高く評価された。しっかりとした基礎データは、時間によって鮮度が落ちることがなく、またメディアの変遷にも左右されずに、表現され続けていく源になりえることが、この作品で示されたのではないだろうか。(岩谷 徹)