© Claudius Gentinetta

第13回 アニメーション部門 優秀賞

The Cable Car

短編アニメーション

Claudius GENTINETTA / Frank BRAUN [スイス]

作品概要

ケーブルカーで山中のとある場所に行くあいだ、ひとりの老人が嗅ぎタバコに興じている。すると、くしゃみをするたびにケーブルカーがどんどん分解していく。それにもかかわらず、老人は運命をまったく受けいれようとせず、いっこうに平気のようだ。

贈賞理由

海外応募作品のなかでストレートに「おもしろい」作品に出会えた。タイトルは『The Cable Car』だが、これは日本では「ロープウェイ」と呼ばれるのでその認識で話を進めるが、そのゴンドラに鼻炎持ちらしき老人が乗り込み山頂へと向かう。老人がくしゃみをするたびにその風圧で車体が破壊され、ついには…。ギャグがエスカレートしていく伝統的なカートゥーンスタイルの演出で、シンプルなストーリーをテンポよく見せていくいっぽう、キャラクターの造形と美術は、手描きドローイングと3DCGを巧みに融合させ温かみや手ざわり感のある画面と動きを生みだしている。ロープウェイの落下の恐怖はスイスならではの身近なテーマなのかもしれないが、日本でもあれにのって足元がヒヤリとした体験者は多いはずで思わず引き込まれてしまう。鼻がムズムズ、足がスースーする生理的な体感と相まって、おかしいけれどちょっと怖い、不思議な味つけが印象に残る逸品である。