©︎ 2021 Shin Hanagata

第25回 アート部門 新人賞

Uber Existence

メディアパフォーマンス

花形 槙[日本]

作品概要

「そこにいること」そのものを提供する「存在代行」サービス。利用者はサイトにアクセスし、商品としての身体がずらりと並ぶのを目の当たりにする。そして、行きたい場所、なりたい身体に応じて存在代行者(アクター)を選び、アプリを通じて彼らと接続し、指示しながらアクターの身体を操作することで、実際にその場に「存在」できる。作者は実際にこのシステムを用いてアクターとして生活を始めた。実装されたサービスと生活するアクターにより、社会でシームレスに展開されるメタ・パフォーマンスとしての同作は、アルゴリズム分析で生活がコントロールされかねない時代に生きている私たちに対して、自己同一性や自由意志についての問いを投げかける。

贈賞理由

作者のUber Eats配達員の経験から、ロボット的な身体として存在そのものを貸し出すサービスを実践し、そのようなサービスが稼働した際にどういうことがアクターや依頼者の身に起こるかをアートの形で実験したのは非常に興味深い。もちろんこのようなサービスが実現すれば倫理的な問題をはらむが、では実際に今行われている料理宅配サービスとどう違うか、また自身がアクター登録するとしたらどこまで許容できるか、自意識の不要な労働はどこまで社会に受け入れられるのかなど、思索のきっかけを多数つくっているのも秀逸と感じた。(八谷 和彦)