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監督・アニメーション:鋤柄真希子|脚本・撮影・編集:松村康平|音楽:竹村延和

第17回 アニメーション部門 新人賞

WHILE THE CROW WEEPS ―カラスの涙―

短編アニメーション

鋤柄 真希子/松村 康平

作品概要

動物だけが持つことを許された「生きる」という本源的な意志や本能を主題とした作品。彼らのよどみのない純粋な生に対する意志は、言葉を持たないこと―つまり言葉(=思想)如―に生来するパトス(情念)に他ならない。本作の「子ガラス」と「母」の関係は、生と死という矛盾する二つの概念が、互いに補完し合い、両者が一体となってひとつの全体性をなす“融即”の関係にあることを物語っている。自分のために犠牲となった亡き母を捕食し、命をつないでいく「子ガラス」を描くことを通じて、我々人間にとっては禁忌とされるカニバリズムをやすやすと超え、己以外の他者に生命が融けてゆく象徴的なイメージを表現している。

贈賞理由

自然の中で厳然と生きる生命を描いてきた鋤柄真希子の、渾身の新作である。曇天の夜明けの空。霧の厚み。浮かび上がるカラス一羽一羽のしぐさ。丹念に描かれたその見事な質感と描写の確かさにまず圧倒される。そしてカラスたちの表情に、擬人化された感情解釈は一切描かれない。この世界の緊張感、その中で生きること、死ぬことが全く等質に、ひとつの大きなイデアに包み込まれ、ただそれに基づき乍ら生きるカラスたちの姿や行為を、尊厳を込めて描き切っている。自主制作でこのような短編を発表し続けている作者の今後に期待したい。(和田 敏克)