13回 アート部門 講評

メディアアートはいまだ表現ジャンルとしては確定されていない。文化を構成するのは、ことごとくメディアだからだ。メディアアートの呼称が必要となるのは、既存メディアへの批判(既存の使用方法、機能を再考させ、新たなメディア構築の可能性を示す)を含むためである。したがってメディアアートにとって先端的メディアやテクノロジーの使用は十分条件ではない。その表現がメディアとして(既存メディアを超えた)いかなる関係、機能を産み出し、新たな時間、空間を組織するか、それこそが問われる。これは現在の社会的要請(必要性)を一歩先んじるゆえに芸術であり、また、そこでこそ芸術は公共的価値をもつといえる。単なる技術的洗練は審美的に評価されるだけなら、かえって弊害となる。たとえば非線形などの概念を弄し、アルゴリズムを駆使し自然生成を模写しても、自然のうつろいを愛でる美学に帰着するなら最新技術は必要ない。伝統的な庭で事足りる。

プロフィール
岡﨑 乾二郎
近畿大学国際人文科学研究所教授
1955年、東京生まれ。造形作家、批評家。82年、「パリ・ビエンナーレ」招聘以来、数多くの国際展に出品し、2002年にはセゾン現代美術館で大規模な個展を開催。また同年の「ベネチア・ビエンナーレ第8回建築展」(日本館ディレクター)や、現代舞踊家トリシャ・ブラウンとのコラボレーションなど、常に先鋭的な芸術活動を展開。主な著書に『ルネサンス経験の条件』(筑摩書房)、『れろれろくん』(ぱくきょんみと共著、小学館)などがある。近畿大学国際人文科学研究所副所長教授。