13回 アニメーション部門 講評

今回のアニメーション部門には外国からの応募も含めて、これまでで一番多い473本の応募があった。今年の応募の特徴として商業的な作品(長編、TV用、OVA)より、短編作品の数が増えたことだった。これはパソコンによるアニメーション制作ソフトの普及と、大学などでアニメーションを学ぶ若い人の増加と無関係ではないだろう。中国、韓国などがアニメーション産業に力を入れていて、追われる立場になりつつある日本のアニメーション業界にとって良い兆しといえるかも知れない。さて、メディア芸術祭では応募という形式をとっているので、巷では評判が高い話題作でも応募していただかなければ審査の対象にはならない。大賞の『サマーウォーズ』は今年の大きな話題作であったし、内容も制作技術もやはり大賞にふさわしい作品だった。細田守監督は3年前の『時をかける少女』に続く2回目の受賞だが審査員全員が認めるところとなった。優秀賞は議論百出、結局は表現、内容が個性的なものへ集約していった。外国からの2作品が選ばれたことは、それだけこの芸術祭が海外にも知られ優秀な作品の応募が来ている証拠といえるだろう。国内の受賞作はそれぞれ特徴をもった作品になった。実験的なもの、いつ発生するかわからない超大型地震の悲劇を扱い警告的な意味を含めた作品、そして懐かしい風景の中に展開される切ない恋物語...。この他、限られた数の賞には入らなかったが優れた作品が多かったことを報告しておきたい。

プロフィール
鈴木 伸一
アニメーション監督
長崎市生まれ。中学時代から『漫画少年』などに投稿。上京後、1955年横山隆一主宰の「おとぎプロ」に入社しアニメーターの道へ、『ふくすけ』『プラス5万年』などの制作に従事。63年藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、石ノ森章太郎、つのだじろう、赤塚不二夫らトキワ荘の仲間と「スタジオゼロ」を設立。TVアニメ『おそ松くん』『パーマン』などを制作。ユネスコ・アジア文化センターの識字教育アニメーション映画『ミナの笑顔』ほか4本をマレーシアのラットと共同監督。現在、文星芸術大学客員教授、杉並アニメーションミュージアム館長。