13回 アニメーション部門 講評

選外となった「惜しい」推薦作品(主に短編)について記しておきます。思春期のヒリヒリするような痛い心象を不快の極みとも言える表現で描ききった『HAND SOAP』は、その完成度、オリジナリティに票が集まったのですが、その芸術性と品位などで喧々諤々の討議の末、惜しくも入賞にはいたりませんでした。『忘却星の公式』も、透明水彩で胎内回帰ともいえるインナートリップを女性目線でつづった力作だったのですが、語り口や心情への共感の有無などで意見が割れました。『Lizard Planet』『ひとりだけの部屋』は、とても巧くつくられた気持ちのいい作品で最後まで接戦でした。悪意ほとばしる『フジログ』の家族には、個人的に楽しませていただきました。 なにせ審査委員もつくり手のため、好まざるを評価しつつも、最後の選択は、やっぱり好みになってしまいます。しかしながら、媚びることなく己の道を極めた作品には心を打たれます。自分も道を極めねば!と思う今日この頃であります。

プロフィール
野村 辰寿
アニメーション作家
三重県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、株式会社ロボットに入社。CMディレクターとして活動後、フジテレビ『ストレイシープ』をきっかけに、『ジャム・ザ・ハウスネイル』『ネコのさくせん』、TVアニメシリーズ『ななみちゃん』、ネットアニメーション『Moon Boon』など、さまざまなアニメーション作品を手がける。現在、同社アニメーションスタジオ CAGEに所属。オリジナル作品や、CM、TV番組、Web、絵本、イラストレーションなど幅広く活動中。