13回 マンガ部門 講評

ここ数年、あまり新作マンガを読んでこなかった不肖のマンガ家の身の上で、このメディア芸術祭の審査に臨みました。審査は自由度が高い分、責任も重く思われ、100冊近くの本を目の前にした時には、少しめまいが...。最終審査に残った25作品は、ほとんどが未読。仕事を抱えながら短期間で読み切るのは確かに大変でしたが、どれもが高水準で密度の濃い作品で、美味しすぎて早食いしてしまうのがもったいないほど充実していました。特に歴史物とサイエンス・ファンタジー系の、重さと格調のある上位作品の出来には審査を忘れて引き込まれました。最終審査では、他の審査委員の先生方のご慧眼に眼をひらかされながら、大いに迷いました。上位を競った作品は、未完の大作ながらどれも甲乙付けがたく、結局、私的には好みを優先させた作品選びとなりました。改めてマンガの多様性と面白さに興奮し、審査委員として参加できたことに、誇りを感じた貴重な時間となりました。

プロフィール
さいとう ちほ
マンガ家
東京生まれ。1982年、「コロネット」(小学館)にて『剣とマドモアゼル』でデビュー。97年、『花音』で第42回小学館漫画賞受賞。アニメ制作集団「ビーパパス」に参加し、97年度TVアニメ『少女革命ウテナ』の漫画版を執筆。TV版と劇場版映画のアニメーション制作にも深く関わる。現在「flowers」でフィギュアスケートを題材にした『アイスフォレスト』、「凜花」で古典原作の『子爵ヴァルモン~危険な関係』を連載中。