12回 アニメーション部門 講評

今年の応募は総数346本。今年の特徴としては短編部門によいものが多く、それにくらべて長編部門は突出したものがなく、大賞も短編部門の『つみきのいえ』がすんなりと決まった。地球温暖化を巧みに取りこんだ不気味な静けさのなかに、ひとり家に住み続ける男、去っていった家族の思い出をしみじみ綴る味わい深い描写の優れた作品であった。優秀賞、奨励賞は議論をつくした上の決定であったが、やはり短編作品が多数を占めた。長編部門から優秀賞に選ばれた『カイバ』は、シュールな内容と新鮮な画面のOVAであり、どちらかといえば短編作品に近いテイストを持った作品といってもいいだろう。入賞はしなかったが短編作品のなかには優れたものが多かった。日本のテレビアニメの業界は経済的な問題で若い人が定着しにくい世界だと聞く。しかし、個人で活動する短編のアニメーション作家には、確実に若い人が増えていることを実感する年になった。

プロフィール
鈴木 伸一
アニメーション監督
長崎市生まれ。中学時代から『漫画少年』などに投稿。上京後、1955年横山隆一主宰の「おとぎプロ」に入社しアニメーターの道へ、『ふくすけ』『プラス5万年』などの制作に従事。63年藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、石ノ森章太郎、つのだじろう、赤塚不二夫らトキワ荘の仲間と「スタジオゼロ」を設立。TVアニメ『おそ松くん』『パーマン』などを制作。ユネスコ・アジア文化センターの識字教育アニメーション映画『ミナの笑顔』ほか4本をマレーシアのラットと共同監督。現在、文星芸術大学客員教授、杉並アニメーションミュージアム館長。