7回 アート部門 講評

今年から部門構成が変わって新たに発足したアート部門には900点以上の作品が寄せられ、海外からの応募もこの部門に集中した。これはメディアアートの持つ国際的な広がりと同時に、このメディア芸術祭のコンセプトに多くのアーティストが共感し、あるいは注目していることを示している。本来、インタラクティブアートやWebアート、デジタル技術を用いたインスタレーションや映像を手がけるアーティストたちの多くは、伝統的な芸術観や美意識によるのではなく、メディア芸術ならではの新たなテーマや表現を追求している。また近年、インタラクティブアートを中心とした日本のアーティストの国際的に活躍と、アニメーションやゲーム、携帯コンテンツ等への注目と相まって、日本のメディア芸術の分野で日本の果たしている役割に関心が高まっている。このような意味で、アート部門の発足はまさに時宜に適ったものだったと言えよう。
応募作品のレベルは全体としてきわめて高く、またバラエティに富んでいて、受賞作品を絞り込むのは大変であった。
たとえばインタラクティブ部門には、SIGGRAPHやArs Electronicaをはじめとする国際的に知られた公募展の入選作品が多数応募されるという状況だった。入賞・入選に値する作品が多数ある中で、アート部門であるということを根底に置き、メディアアートが切り開きつつある新たな表現や領域について議論して受賞作品を決定した。メディアアートは若手がその才能を発揮しやすい分野であり、全体を通じて審査は作家の知名度、他の公募展への入賞歴、出身国などはまったく区別することなく行った。海外からの有力作品が数多く寄せられた中で日本の若手アーティストの活躍が予想以上に目立ったのは、前述した日本のメディアアート界の活性化の反映かもしれない。最後に、受賞作品や審査委員会推薦作品以外にも多くの素晴らしい作品があったことを強調したい。

プロフィール
草原 真知子
早稲田大学教授
1980年代前半からメディアアートのキュレーションと批評、メディア論研究で国際的に活動。筑波科学博、名古屋デザイン博、神戸夢博、NTT/ICCなどの展示のほか、SIGGRAPH、Ars Electronica、ISEAなど多くの国際公募展の審査に関わる。講演、著作多数。デジタルメディア技術と芸術、文化、社会との相関関係が研究テーマ。UCLA芸術学部客員教授。工学博士。