7回 エンターテインメント部門 講評

エンターテインメント部門は、ゲーム、Web、VFX(映像)、キャラクター、遊具その他、という多彩なジャンルからなる新設部門である。今回の審査結果が今後のこの部門の性格付けに大きな影響を与えていく。いったいどのジャンルの作品が勝ち抜いていくのか、当初は全く予想がたたなかった。だが、審査が始まると、いきなり圧倒的な強さを見せ付けたのがゲームであった。なかでも大手ゲームメーカーによる大作は一筋縄ではない。現代の日本を代表するコンテンツとしてのプライドのもとに、「絶対にいいものにして楽しませければいけない」というプレッシャーと戦い続けて作られているだけのことはあって、さすがに圧巻である。
これに比較すると、部門内の他ジャンルは正直なところどうしても見劣りがしてしまう。Webについては全体的にアート部門での受賞作にあったような斬新性が見受けられるものが少なく、物足りなかった。
VFX(視覚的特殊効果)については、圧倒的なクオリティーのハリウッド作品が立て続けに公開されているという環境下での評価となるわけで戦いは辛い。そんな中で我々はスケールの大小や技術の高低ではなく、エンターテインメント・コンテンツとしての作者のアイデアとセンスが光るものを評価した。今回受賞は逃したがCM作品にもその独創性においてきらりと光るものがあり今後が期待される。遊具は絶対的な応募数が少なかったのであるが、人気キャラクターを自由に繰ることができる『ポケモーション』の楽しさと完成度に評価が集まった。
結果的に今回のこの部門の審査は、賞の持つ「今年を象徴する圧倒的なクオリティーを持つ作品をきちんと評価する」という面と「今後大きな期待を寄せることができる注目すべき作品にスポットライトを当てる」という面の両面のバランスをうまくとりつつ評価できたのではないか、と思っている。ただ、部門の分け方など残された今後の課題も多い。

プロフィール
中島 信也
CMディレクター
1959年、福岡県生まれ。年間40本近くのCMの演出を手がける一方で、株式会社東北新社取締役、多摩美術大学教授を務める。デジタル技術を駆使した娯楽性の高いCMで数々の賞を受賞。主な作品に日清カップヌードル『hungry?』(カンヌ広告祭グランプリ)、サントリーDAKARA『小便小僧』、 HONDA『STEP WGN』、サントリー『伊右衛門』など。