9回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インスタレーション

今年の作品には、植物や蛍光灯、メカニックな機構、レンズなど、「アナログ」と「デジタル」の両方の特性を生かした作品が多かった。インスタレーション作品の場合、そこを訪れる人間の身体性がとても重要になる。これは椅子に座って見る映画や、ビデオ、パソコンのように「目と脳」が働くメディア作品とは異なる。その空間を訪れ、全身で体感することがインスタレーションでは重要である。それは人間の感覚器官のアナログ部分に訴えるものであり、その身体性のアナログ性に連結するような作品が多かったのである。デジタルを超えて、アナログ・デバイスがもつ複雑性に注目したともいえるだろう。ただ、その物質性だけに頼った作品では弱い。それらにも制御を働かそうとする姿勢がみえたとき、メディアアートとしての強さを感じることができる。受賞した作品にはそれがあった。

プロフィール
土佐 信道
明和電機
1993年にアートユニット「明和電機」を結成。ユニット名は彼らの父親が過去に経営していた会社名からとったもの。プロモーション展開は既成の芸術の枠にとらわれることなく多岐にわたり、展覧会やライブパフォーマンスはもちろんのこと、CDやビデオの制作、本の執筆、作品をおもちゃや電気製品に落とし込んでの大量流通など、たえず新しい方法論を模索している。2007年は、岡山市デジタルミュージアムにおいて、個展「ナンセンス=マシーンズ展2007」を7月13日〜8月19日の期間開催。また、谷川俊太郎さんとの共作絵本の発売や、全国各地でのワークショップの開催など、多岐にわたる活動を予定。海外でも、フランス、シンガポール、ワシントンと公演を予定しており、ワールドワイドに活動している。1993年 ソニー・ミュージックエンタテインメント第2回アート・アーティストオーディション大賞受賞。2000年 グッドデザイン賞受賞(人間初受賞)新領域デザイン部門。2003年 アルスエレクトロニカ・インタラクティブアート部門 準グランプリ受賞など。