12回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インタラクティブアート

インタラクティブ作品に接して、いつも思うことがある。作者はいったい何を訴えたいのかと。訴えるものは必ずしも哲学的な思想でなくてもよい。徹底的に楽しさ、あるいはユーモアを追求したものであってもよい。背景となっている科学の不思議さを、あたかも魔法のように表現したものであってもよい。そこに作者なりのメッセージがほしい。 今回の応募に関して言えば、海外からの作品に、例えば『touched echo』のようにメッセージが明確なものが少なからずあった。これに対して国内からの作品は、こぢんまりと小さくまとまっている印象を受けた。それは国民性なのだろうか。それともインタラクティブ作品に対してある種の先入観があって、それが作品に影響しているのであろうか。そろそろ思いきった作品が出て欲しい。それを痛感した審査であった。

プロフィール
原島 博
東京大学大学院教授
1945年、東京都生まれ。もともとは数学的な情報理論や通信方式論の研究者であったが、1985年頃からより本質的な人と人の間のコミュニケーションの仕組みに興味をもち、ヒューマンコミュニケーション工学を提唱。顔学などの新しい学術領域の創出や、科学技術と芸術の境界にも強い関心をもつ。映像情報メディア学会会長、日本バーチャルリアリティ学会会長、日本アニメーション学会副会長などを歴任し、現在は日本顔学会会長でもある。