9回 アニメーション部門 講評

【作品カテゴリ別講評】長編アニメーション(劇場公開・TV・OVA)

商業アニメーション業界では近年の特徴として、若い制作会社の台頭があげられる。それらの会社は、目指す作品づくりへの明確な方向性と、力量あるスタッフの制作現場への手厚い配置とで、作品の完成度を高く維持することに成功している。好みも分かれるであろうし、足りない部分もあるかもしれないが、そうしてつくられた意欲的な作品が今年度も多数みられたことは素直にうれしい。受賞作品以外で例をあげる。『交響詩篇エウレカセブン』『タイドライン・ブルー』の 2作品は、技術的にどちらもテレビシリーズとは思えない圧倒的な出来である。これだけのものを週に1本つくり続けるのにどれほどの力量と手間が必要か、同業者としてただ感心するばかりである。『劇場版 鋼の錬金術師シャンバラを征く者』は内容に審査委員の一部から批判があったが、技術的にはよくがんばったと思う。テレビシリーズの『舞-HiME』『ハチミツとクローバー』『フタコイ オルタナティブ』『BLOOD+』はそれぞれ1話限定として優れた技術力に拍手をおくる。

プロフィール
神村 幸子
アニメーター
株式会社サンライズ『シティーハンター』の作画監督、キャラクターデザイン、株式会社東映アニメーション『マシュランボー』の総作画監督、キャラクターデザインなどを務める一方、株式会社ウォルト・ディズニーアニメーションジャパンのアーティスト教育にも携わる。現在、株式会社手塚プロダクションのテレビシリーズ『ブラック・ジャック』の総作画監督とキャラクターデザインを担当している。