7回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】映像

『E -BABY』や『ガラ』など高評価を得た映像作品に共通するのは、これまで蓄積されてきた映像表現の手法や特性をしっかり学習しつつ、現在の新しい技術でそれらの記憶を統合し、自らのヴィジョンと交差させようとする方向だろう。特に今回注目したいのは手触りや肌触りとでも言いたいような、従来のデジタル作品では見過ごされやすかった映像の原初的な身体性をすくいとろうとしている点だ。目覚めたばかりの赤ん坊の泳ぐような眼差し、カタストロフィーの予感におののく体の微細な震えなど、それらの映像を見ることで私たち自身の無意識が照らしだされる。高密度な情報社会が進展し、みな同じような映像情報の断片を組み合わせたり、行き来させているだけで、そこに意味生成が起こらず、何も物語れなくなっているような閉塞的な状況があるが、新しい映像表現で重要なのはやはり自分が何を考え、何をしようとしていて、何を大切に思っているのかを明確にすることだろう。その上でそのことをそれぞれの映像の特性を探りながら物語り、生命化してゆかなければならない。実はそこには必ず身体性の問題がからんでくる。身体化して物語る、体を通して物語ることの重要性が今だからこそ必要とされているのかもしれない。このことは形やイメージが紡ぎだされる身振りという視点とも重なってゆくだろう。そうした意味で今回の多彩な映像作品はその身振りの所在をさまざまなかたちで示しえていたと思う。

プロフィール
伊藤 俊治
東京藝術大学教授