12回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】映像

映像とは、"時間"という問題がひとつの重要な要素となった表現である。観客はある時間、作品が映しだされるスクリーンの前に、たたずむことを強要される。その体験がいろいろな意味において、観客にとって有意義であるならば幸いなことだ。さて今回の映像部門の印象としては、デジタル的表現とアナログ的表現を組みあわせ、作者独自の映像的なテクスチャーを追及しようとしている姿勢が見える作品が多数あったという点だ。特にこの傾向は国内応募作品において顕著で、日本のテクノロジーに対する新しい繊細な感覚の息吹を観ることができ、心強い。いっぽう海外応募作品は、ビデオアート的な実験映像が、多数応募されてきた。日本ではすでに死語となった感が強いビデオアートであるが、脈々と生きつづけ、新しい作品を産みだしている現状に海外の骨太さを感じることができた。しかし、ほとんどの応募作品に対しての共通の印象は、やはり時間の問題だ。その作品を構成している時間は、それに接する観客を拘束するに値する、ある価値を与えているだろうか?より一層の吟味を期待する。

プロフィール
原田 大三郎
多摩美術大学教授
1983年、筑波大学大学院芸術学部総合造形コース卒業。坂本龍一、安室奈美恵、小室哲哉、globe、LUNA SEAなどの国内外コンサートツアーやプロモーションビデオの映像演出、また映画のオープニング映像やVFXなどを担当。1993年、NHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体2 脳と心』CG監督。1994年、第1回日本芸術文化振興賞受賞、マルチメディアグランプリ '94 MMA会長賞受賞。2001年5月より SHARP『AQUOS』VP制作。現在、多摩美術大学情報デザイン学科教授。