第7回 アート部門 講評
【作品カテゴリ別講評】Web
近年、商業的なWebの高度な発展が人材不足を引きおこしたためにWeb上のアートが痩せてしまいつつあるのではないかと国際的に懸念されている中で、今回、200点を超える応募が国内外から寄せられたのは、この分野の発展のためにも非常に喜ばしい。作品からはアーティストたちの熱意が伝わってきた。応募作品のテーマ、手法はきわめて幅が広く、一部にはアート性という点でこの公募展の意図するところから外れているものもあったが、多くの優れた、オリジナリティのある作品を見いだすことができた。イギリスのスタンザがプログラミング技術を駆使してさまざまな表現で描き出す都市の様相、フランスのニコラ・クラウスらによるインタラクティブなダンス・パフォーマンスの映像、ドイツのシュタット・サウンド・ステーションによるやはり都市をテーマにしたものなど、表現的にも技術的にもきわめて質の高い作品がある中で、日本のWebアーティストたちの活躍も目立った。表現としてはインタラクティブ性と動画像を組み合わせたものが多く、今やWebがインタラクティブアートや映像のメディアとして十分なプラットフォームとなりつつあることがわかる。文化的・社会的な視点や国際性が感じられる作品が多く見られるのもWebの特徴だろう。審査委員会推薦作品を通覧することでWebアートの多様さとその可能性の一端が見て取れるであろう。次回はそれがどこまで発展するのか楽しみである。
プロフィール
草原 真知子
早稲田大学教授
1980年代前半からメディアアートのキュレーションと批評、メディア論研究で国際的に活動。筑波科学博、名古屋デザイン博、神戸夢博、NTT/ICCなどの展示のほか、SIGGRAPH、Ars Electronica、ISEAなど多くの国際公募展の審査に関わる。講演、著作多数。デジタルメディア技術と芸術、文化、社会との相関関係が研究テーマ。UCLA芸術学部客員教授。工学博士。