9回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】Web

本年度のウェブ作品は全体的に水準が高かった。しかし、そのなかから突出した作品が出なかったのがさびしいところである。それが賞候補になりながらも惜しくもウェブ作品からの受賞がかなわなかった理由であろう。今年も海外からの応募が多く、そのレベルが高い。作品のバリエーションもあり、新しい方向性にチャレンジしている作品が多かったことは、来年以降に大いに期待がもてるところだろう。国内からの応募はレベルの差がかなりある印象だった。受賞候補に挙がっていた作品は海外からの応募作品よりも質が高かった。しかし国内作品に特にいえることだが、アート部門のウェブというカテゴリーのなかでどのような作品に仕立てていくかを、もっと戦略的に考える必要があるように感じられたし、エンターテインメントとアートとの違いをさらに詰めて考える必要がある気がした。
いまさらいうべきことでもないが、ウェブというジャンルが、アート表現においてもこれからさらに重要な位置づけになっていくことは明らかだ。新しい表現に挑戦するオリジナリティあふれる作品が来年現われることを期待してやまない。

プロフィール
中谷 日出
NHK解説委員
神奈川県出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。NHKのロゴマークデザイン、NHKスペシャル『人体・脳と心』のアートディレクション、ハイビジョンドラマ『DREAM TV 200X』監督など。また、2001年より『デジタル・スタジアム』、小学校高学年用メディアリテラシー番組『体験!メディアのABC』キャスターを、『趣味悠々デジタルビデオを使いこなそう』では講師を務める。Gマーク(グッドデザイン賞)選定委員。