8回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】Web

海外から多数の応募があったにもかかわらず、残念ながらウェブ作品から入賞がなかった。ネットワーク、大衆の参加という本来ウェブがもつ表現の特性を生かした実験的なプログラムが、すでに商業的に実践されている時代になってしまったからだろうか。応募作品のほとんどが今だに「デジタル紙芝居のウェブ上での発表」であり、これでは映画やゲームに勝てない。よく言えばインターネットが社会に定着してきたということであるが、このままでは、「テレビ・アート」というものが存在しないように、今後「ウェブ・アート」というジャンルが消えていく可能性もある。しかしウェブ・アートは、誰もが改良・改造できる「プログラム」と「コンピューター」という機械の上で制作されるものだ。そして「ネットワーク」というさらに大きなモチーフがある。大衆化による安定期を打破し、もう一度コロンブスの卵的な発想で、新しいウェブ・アートが発見されることを望む。

プロフィール
土佐 信道
明和電機
1993年にアートユニット「明和電機」を結成。ユニット名は彼らの父親が過去に経営していた会社名からとったもの。プロモーション展開は既成の芸術の枠にとらわれることなく多岐にわたり、展覧会やライブパフォーマンスはもちろんのこと、CDやビデオの制作、本の執筆、作品をおもちゃや電気製品に落とし込んでの大量流通など、たえず新しい方法論を模索している。2007年は、岡山市デジタルミュージアムにおいて、個展「ナンセンス=マシーンズ展2007」を7月13日〜8月19日の期間開催。また、谷川俊太郎さんとの共作絵本の発売や、全国各地でのワークショップの開催など、多岐にわたる活動を予定。海外でも、フランス、シンガポール、ワシントンと公演を予定しており、ワールドワイドに活動している。1993年 ソニー・ミュージックエンタテインメント第2回アート・アーティストオーディション大賞受賞。2000年 グッドデザイン賞受賞(人間初受賞)新領域デザイン部門。2003年 アルスエレクトロニカ・インタラクティブアート部門 準グランプリ受賞など。