第25回 アニメーション部門 新人賞
骨嚙み
短編アニメーション
矢野 ほなみ[日本]
作品概要
いくつもの島々が浮かぶ瀬戸内しまなみ海道を舞台に、火葬後の骨を噛む「骨噛み」という風習を主題として描いた作品。2人の子どもとその両親の暮らし、島に残る火薬庫の跡、父親の葬式をテーマにした記憶の断片のようなストーリーが、子どものモノローグとともに綴られる。親戚に父親の遺骨の骨噛みを求められたが応じることができなかった子ども、火薬庫から感じられる死や無慈悲な暴力といったイメージは、作者本人の姿、思いでもある。生命感あふれる島の自然とそれを取り囲む海や、おぼろげな子どもの記憶を視覚的に表現するため、ペンで点描を重ねた紙に光を透過しながら撮影。2年半の年月をかけて、生と死のあわいを描いた。
贈賞理由
個人的な体験を基に、作者自身によって手間と時間をかけ丁寧に制作された作品で、そこから伝わる熱量の大きさや、作者の記憶のなかを覗いているような、幻想的で臨場感のある映像表現が高く評価された。大胆に動く人物やカメラワーク、点描と透過による絵づくり、メタモルフォーゼを使った場面転換、子どもによるナレーションなどにより、暗く地味になりがちなテーマを、繊細で複雑な美しい物語として仕上げている。デビュー作ということもあり、新人賞受賞にふさわしい作品であった。(大山 慶)