©Kazuhiko Shimamoto/SHOGAKUKAN

第18回 マンガ部門 優秀賞

アオイホノオ

島本 和彦

作品概要

マンガ家デビューを志す主人公・焰燃(ホノオモユル)の日常をコミカルに描き出す「マンガ家マンガ」。フィクションとされてはいるが、作者の自伝的な側面も持ち、実在の人物も登場する。1980年代初頭、大阪にある大作家(おおさっか)芸術大学1回生の焰燃は、「マンガ家になる!」という熱い情熱と野望を胸に抱いて、日々を過ごしていた。自分の実力に根拠のない自信を持ち、自らの進むべき道を模索中の焰。東京の出版社へ作品を持ち込んだり、後に『新世紀エヴァンゲリオン』を作り上げる若き日の庵野秀明(あんのひであき)をはじめとする同級生との確執を抱えたり、憧れの先輩トンコさんと恋の駆け引きをしたり―。日本のマンガ・アニメ界が新たな局面を迎えようとしていた時代を背景に繰り広げられる、日々苦悶する熱血芸大生の七転八倒エレジー。

贈賞理由

本作は、いわゆる「マンガ家マンガ」にジャンル分けされる作品で、作者自身と思われる芸術系大学に通う学生が、マンガ家を目指して1980年代初頭の芸術系大学で悪戦苦闘する物語である。実録系の「マンガ家マンガ」には、読者もよく知るマンガ家やアニメーターが不可欠だ。本作品もその例に漏れない。やがて『新世紀エヴァンゲリオン』で一世を風靡する庵野秀明や、オタクの教祖とも言える岡田斗司夫(おかだとしお)などが、実名のまま笑えるバイプレイヤーとして登場する。当時の人気マンガに対する主人公の批評も爆笑ものだ。各巻の冒頭にフィクションであることが大書されているが、読者は誰も信じていない。多くの著名人を輩出した芸術系大学は、差し詰め「1980年代のトキワ荘」といったところか。つまり本作品は「平成の『まんが道』」なのだ。連載開始から7年になるが、深夜に放映されたテレビドラマも話題になって、今、まさに旬のマンガとなった。(すがや みつる)