第24回 アート部門 優秀賞

Bricolage

メディアインスタレーション

Guy BEN-ARY / Nathan THOMPSON / Sebastian DIECKE[オーストラリア]

作品概要

ヒトのiPS細胞から作製した心筋細胞でつくられ、絹製の組織体で培養された自律的な生命体、オートマトン(自動装置)に関するリサーチプロジェクト。心筋細胞は、一滴の血液から得られた血液細胞を再プログラムすることでつくられている。細胞は生体材料として使われることの多い素材である絹の上で増殖し、脈を打つことで、このオートマトンを動かしている。また、自律的に集合体をつくるため、肉眼で見えるほどの大きさになる。鑑賞者は、頭上に配置された粘土、金属、ガラスでつくられたインキュベーター(恒温培養装置)の下から、カメラやモニター、顕微鏡などを媒介せずに細胞のパフォーマンスを見上げる。一滴の血液を動くことのできる生物へと変容させる生物学的錬金術は、文化的な観点からも探求されるべきだが、そこで得られる結果は興味深く挑戦的であると同時に、不安を伴うものであるといえる。

贈賞理由

作者は、これまで半生物的な体外生命体との関係性や交流を探求してきた。本作では、iPS細胞の製法によって、同意した匿名ドナーの血液を心筋細胞へと変換する。試験管内で増殖した心筋細胞は、互いに同調しながら自発的に拍動を始める。一般にバイオアートは、生物の活動が微小であるために見た目の変化がわかりにくい傾向があるが、本作は、絹を骨組みとして心筋細胞を培養する手法を開発し、細胞の自律的な活動、集合化、組織化を可能にし、観客に向けて可視化することに成功している。作者が「代理演者」と呼ぶこの生物学的機械のパフォーマンスは、目に見えない細胞の世界を、目に見える、観客と共有が可能な世界へと橋渡しする。バイオアートの文脈における「メディア」という単語は、芸術的表現、あるいはコミュニケーションや保存の際に用いられる媒体としてだけでなく、生物にとっての周辺環境や育つための培地、社会的な状況や適性をも含んでいる。「メディアアート」という言葉を問い直し拡張することで、私たち人間もメディアとなりうることを伝えている。(ゲオアグ・トレメル)